プライドがチョモランマで崩壊しそうだってよ

プライドが高い33歳女子の普通の日常を小説形式でお届けします。

秋が来ると思いだす

月曜日。


またかったるい一週間の始まりだ。


月曜は早く会社に来なければならない日で
朝一の営業会議で先週のクライアント獲得状況の進捗をなぜか男に混じって言わせられる。


ハ?だからワタシ事務職なんだけど?

 


会社からの対応にいささか疑問は感じるものの、ワタシは
【女性なら誰しもが憧れる丸ビルの事務職】で【本当に幸せ。】
と言い聞かせ、自席に戻る。

 


「ふわぁーー」

 


おもむろに午前中4回あくびをしてみる。


「シオリさんなんだか眠そうですね!昨日も派手に遊んでたんですかぁ?!」


斜め前に座っているレイコ28歳。マリと同じジャンルに属する洋服安物系ジョシのひとりだ。

 


フッ

 


「あっ、見られちゃったの恥ずかしいっっ。昨日は日帰りで奥多摩紅葉狩りに行ってて。帰りは渋滞で家着いたのが深夜だったの~ ホラ、キレイでしょ」

 

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「えーー!誰といったんですかぁ??ア・ヤ・シ・イーーー!彼氏?それとも彼氏候補のダンシBくんとかですかぁああーーーシオリさんいっぱいいそ・・・」

「コラっやめなさーぁぁーい!」


「キャー」

 

 

 

フフフ

 

 

 

昨日は家でずっと寝てたからマジ今眠くない。
この写真は来るであろう質問に備えてあらかじめ用意していた8年前の写真。


まじみんな頭弱いからチョロイッテカンジ。






 


8年前。
初めて行った泊りのお出かけ。
別に今この写真が出てくることに特別意味はない。


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「わぁー!キレイ!カズキあれ見て!」

わたしが指を指した先にあったのは大きな野うさぎ。
奥多摩は東京とは思えないほど壮大な自然が残っている。


「あー野うさぎ、逃げちゃったぁ。。一緒に写真撮りたかったのにー、、もう!カズキがビックリさせるからだよっ!!」


「あははは、もうほんとにシオリはすぐ怒るなーそんなに怒るとヤカンって呼ぶぞ~」


「なにそれ!ちょっと謝りなさーい!!」


初めてカズキから誘われて行った旅行。

2人でふざけあいながら走った川沿いの道は今でも忘れない。


顔を寄せ合って撮った写真。


2人で分け合った鮎の塩焼き。


ワタシの心の高揚を表しているかのように真っ赤に燃え上がる紅葉。

 


カズキと初めて食事をしてからもうすぐ一年だ。

ワタシたちはあの日を境に、頻繁に会うようになった。
もちろんこんなこと誰にも言えない。

 


結婚している人と旅行だなんて最高の裏切り行為だし、絶対にダメなことはわかっていた。
でも、ワタシたちは世間でいう不倫とはきっと違う。

ただ単純に出会うのが遅かっただけ。純粋にお互いのことが好きなのだ。

カズキは普段家族の話をしないから、正直家庭の状況は分からないけれど、こんなに自分に時間を使ってくれて、包み込むようにいつも優しく抱きしめてくれて、、、

一緒にいるとカズキの深い愛情が溢れんばかりに伝わってくる。


(もしかしたら奥さんとうまくいっていないのかもしれない。)

 

 

 

その日の夜は、宿に戻ると、ワタシたちは朝まで愛を確かめ合った。

 


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ヴーヴーヴー・・・

 

 

カズキのケータイのバイブの音で目が覚めた。

なんだか喉が渇いたのでお水を飲もうと立ち上がると、カズキのケータイが光っている。

 

 

"" おはよ!お家空けちゃっててごめんね。おかげさまで実家でゆっくりしているよー^ ^ねぇ聞いて!さっき初めてあかちゃんがお腹蹴ったの!カズキに似て元気なのかなぁ^ ^ カズキパパ毎日お仕事大変だと思うけど、ガンバってね♡""

 

 

ワタシは膝から崩れ落ちた。

 

 


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