プライドがチョモランマで崩壊しそうだってよ

プライドが高い33歳女子の普通の日常を小説形式でお届けします。

【所詮は赤の他人】

もう何時間たったのだろう。


窓の外からは、学校が終わって下校する子供たちの元気な声が遠くの方から聞こえてきた

 


ワタシは何時間も崩れ落ちた場所から動くことができず、コーヒー豆も8時間ほど転がったままだ
ラインの内容が何度もぐるぐると頭を回る

 

 

 

ナンデ――――――― ………

 

 

 

それは、カズキにまた裏切られて悲しいとか、嫁からの脅しともとれるラインへの恐怖心とか、
もはやそういう感情ではない。

 


それはこのラインには何か強烈な違和感を感じていたから。

 

 

 

 

 

 


なぜ嫁は自分の夫から送っているメールも見ているはずなのに、そんな冷静でいられるの?


最初に連絡をよこしたのはカズキの方なのにワタシばっかり・・・


もう金輪際、わが家を荒らさないで?


これじゃあ、ワタシが一方的に連絡をしているみたいじゃない…

 

 

 

 

 

 


!!!

 

 

 

 

 

あぁ、
そういうことか…

 

 

 

(カズキ、自分のラインは ちゃっかり消してるんだ―――――――。)

 

 

その瞬間、以前カズキの嫁から送られてきたメールの内容が脳裏によぎった。

 


""「自分はあなたに興味がない」と伝えても全く受け入れてもらえず、でも、得意先様なので適当にはあしらうこともできないと本人も悩んでいます。""

 

 

 

フフフ

 

 

 

全ての辻褄があった今、ワタシの中で計り知れない虚しさと、凄まじい憎悪感が生まれてきた。

 

 

もう、もうすべてがくだらない。このまま実家に戻って、ケータイの番号も変えて、うんざりするすべてのものから逃げてしまおうか…

 

 

そのときだった。

 

 

 

 


ピンポーン♪

 

 

 

 


ドアの向こうにいたのは・・・・カズキだ。

 

 

 

まさか…、家に来るなんて・・・!

 

 

今更何を言いに来た?

悲しみと怒りで爆発しているはずなのに、でも、ドアの向こうにはまぎれもなくカズキがいる・・・。


居留守を使うこともできるが、このままではワタシだけ泣き寝入りすることになるのは目に見えているし、カズキに会うのはこれが本当に最後になるかもしれない。

 


思い切ってドアを開けてしまいたい気持ちもあったが、
でも、やっぱり嫁から慰謝料を請求されて憔悴しきっているボロボロのワタシを見られたくないし、
散らばったコーヒー豆も見られたくないのでインターフォン越しに応答することにした。

 

 

 

スマホの録音ボタンを押した上で―――――――。

 

 

""ハ、イ…。""

 

 

 

""あ、出てくれてヨカッタ。あの、、その!
このままでいいから、とにかく俺の気持ちを聞いてほしい。

今朝は変なメール送っちゃってごめん。嫁が勝手に…。

慰謝料なんてとんでもないし、本当にごめんな。嫁にもよく言っとく。

キズツケテ、ゴメン…、、あと、、、サルシッチャのパスタの件は、本当だから…。


じゃあ。(ガチャ)""

 

 

カズキが自らワタシの家に来たこと、今日の朝のメールは嫁が勝手にやったこと。
そして、サルシッチャのパスタの件は本当にまた行きたいと思ってくれていること。

 

 

これでようやくこっちも証拠をとることができた。

 

 

イイコを今まで演じてきたけど、復讐ってこういうふうにやるんだね――――――

 

 

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それからというもの、私は空想の話をカズキに送りまくった。
もちろんその先にいるカズキの嫁に届くように―――

 

 

明日は来るよ、ワタシのために。

 

 

 

カズキからの返信はなくても、もうどうでもいい。