プライドがチョモランマで崩壊しそうだってよ

プライドが高い33歳女子の普通の日常を小説形式でお届けします。

独身は今しか楽しめない

(はぁー今日も疲れた)


17時半定時きっかりに退社し、まっすぐ帰宅。


事務の仕事と言えば世間的には腰かけOLの代表職とも言えるだろう。

仕事はもっぱらコピー取りとお茶出し程度で愛想よくさえしていれば怒られることもない。
仕事はほどほどに、でも、アフターファイブは全力で謳歌する、まさに女性だったら一度は憧れる職業のはずだが、私は別。


「キミは体が頑丈そうだから。」という理由だけで実は最近営業もやっているし、
仕事で成績が残せないと男の営業マンに混じって詰められたりもされだした。


でも、銀行でくだらない上司に囲まれて社畜のように働いている元同期に比べれば断然マシだし、頭がいい法律事務所の先生たちと丸の内で働けるなんて、ワタシは本当に恵まれていると思う。


たまたま東京駅の丸の山ビルという雑居ビルにオフィスがあるから、丸ビルで事務をしていると周りには言っている。

こんな最高に聞こえがいい職業をそう簡単には手放せない。

 

 

 

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『シオリさん~!お疲れさまです♪♪来週金曜日ひまですかぁぁ~~~?
飲み会あるんですけど、女性一人募集中で☆
シオリさん来てくれたらうれしいなぁ(^^♪♪
でもシオリさん金曜日とかもうきっと予定アリですよね。。?(涙)』


夕飯に大好物の豚シャブを食べているとスマホがなった。
職場の後輩マリからだった。


マリは彼氏と半年前に別れ、新たな出会いを探すのに一生懸命だ。
彼氏がいないと人生楽しめないなんてなんだか逆にかわいそう。
ワタシは独身は今しか楽しめないから今の自由な時間を大切にしたい。

 


とりあえず1時間半ほど時間をおいてこう返した。


「来週金曜日、ちょっと調整している予定があるんだけど、時間次第で行けるかも^^」


マリにはとりあえず金曜日は忙しい風なメールを送り、明日会社で予定が調整できたと言えば自然だろう。


別に男に困っているわけではない。あくまで後輩マリのお願いだから行くのだ。

でも少し楽しみだ。

 

 

シオリ プロローグ

いつ何を間違えたのか。小さなころ思い描いていた未来には程遠いとこに今いる。

”ワタシハイイコ”だったのに。

 

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「マリちゃんのマリンブルーのお洋服かわいーね!どこで買ったの?」

 

見た目2980円ぐらいであろう安っぽいワンピをきた26歳の後輩はいつも着ている服が安っぽい。いや、本当に安いものを着ているから時々こうしてバカにして聞いてみる。

 

 マリちゃんはうれしそうな顔で

「ネットでかったんですぅ。マリンマリンレーベルですぅ。シオリさん知ってますぅぅ?」といった。

 

 

 

 

聞いたこともないブランドにワタシは鼻で笑った。

 

 

「ネットで服かうんだーサイズとか質感とかネットだと難しくないー?あたしは1着1着を大切に着たいからいつも百貨店で良い物を買って長く着るタイプなんだよねぇ。」

 

こう言うとマリちゃんは尊敬のまなざしでワタシを見てくる。実に気持ちがよい。

 

 

 

でも本当はうそ。手取り25万しかないのに9万円もする家賃の家に住んでいるから洋服なんてユニクロでしか買っていない。

ユニクロバレしないために、地味でベーシックなものしか買っていないからワタシのワードローブから色が消えてきた。

 

ワタシは中村シオリ。33歳。

大学は国立を出て大手銀行に総合職(女性2名)として入るも、同期がやっている仕事をバカバカしく思えて、さらに仕事に費やす時間が多かったので、2年ほどはたらいて転職した。今は定時に帰れる法律事務所で事務をしている。

転職して本当によかった。総合職で働いているみんなは、まるで社畜

あんな上司のもとで貴重な20代を消費するとか、人生の無駄だと思う。

それでお給料が高くてうれしとか思っている人種と私は一生関らないし。

 

結婚は、慎重に相手を選んでいるので、まだしていない。

というかまだしたくない。

 

周りからも独身を謳歌していると思われているし、実際謳歌しているし。

 

別に、さびしくなんてない。

 

 

プライドがチョモランマで爆発寸前だってヨ!

「人見知りだからネイルはお店に行かずに自分でやるんだぁ♪」

「彼氏がお医者さん?お医者さんて気難しそうだからわたしだったらパスかなー」

これは、限られた給料の中で精いっぱいの背伸びをして世田谷のはずれに住むプライドが高すぎでもはやチョモランマ級の33歳・独身女性の話。