プライドがチョモランマで崩壊しそうだってよ

プライドが高い33歳女子の普通の日常を小説形式でお届けします。

神様のいたずら

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""2人はもうすっかり元気になって新しい出会いに向けて勢力的に活動中ですよ笑""

 

 

カズキにいったこの言葉。

本当は真っ赤なウソ。

カズキとの三角関係があった挙句のカズキの結婚宣言は2人を地獄に叩きつけた。


マイはその後、寂しさを紛らわすかのように行きつけのバーのマスターと体だけの関係に走り、
美香も経理という立場を利用して会社の金を不正に利用。大事には至らなかったものの出世街道の道は断たれた。


でも、そんな2人をそこまで追い詰めたのは紛れもなくカズキだった。
今から思えば、カズキほど優しくて残酷な男はこの世にいるのだろうか。

カズキを忘れられず苦しんでいる2人を、親友であるワタシは一番近くでそれを見ていた。
もうあれから1年も経つのに・・・


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『今年ももうクリスマスの時期かぁー』


シオリの会社はボストンに本社を置く世界の中でも有数のメガバンク
来週に本社の会長が孫と一緒に急遽来日することになり、孫がついでに日本を観光したいと言い出したため、そのアテンド係にシオリが抜擢されたのだ。

最高級のおもてなしをするようにと、日本支社の社長からも指示をされている。
店の手配からアメリカンジョークの練習の日々。忙しさのあまり街が彩り始めたのにも気づかなかった。

今日は上野動物園の貸切交渉が長引き、時計を見ると時間はもうすぐ22時だ。


会社の目の前には華やかに飾り付けられた大きなモミの木が暖かいまなざしでこちらを見ている。

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(来年こそはステキな男性と出会えますように。)


クリスマスツリーの前で立ち止まり、大きなツリーにお願いごとでもしてみよう。


クリスマスツリーのあたたかな光に吸い込まれるような感覚がして日々の疲れが癒されていく・・・シオリはその場を動けずしばらく呆然とツリーを見上げていると、

 


「遅くまでお疲れさま!」

おでこに当てられたホットコーヒーにびっくりして振り返るとそこにいたのはカズキだった。


「えぇえ?桜井さん!?なんでここに・・・!?!?」


「近くでクライアントの祝賀会があってね。疲れて途中で抜けてきたけど、このクリスマスツリーに寄り道してから帰ろうかなって思って。」


「そうなんですね!桜井さんクリスマスツリーなんか見るんだ!かわい~笑。
あ、なんかイヤホンから音楽もれてますよ?・・・この曲、、もしかして岡本マヨ?のTomorrow??キャーうけるーーーー!」


普段会社で見る顔とは違った、プライベートな一面を見た気がして、なんだか無性におかしくなってしまった。


「絶対誰にもいうなよ~~~~なんかこの曲聞いたら懐かしくなるんだ。」

照れた様子で慌ててケータイの音楽を切るカズキ。きっとカズキにとってなにか大切な思い出の一曲なのだろう。

 

 

「中村さん夕飯まだ?オレ、さっきのパーティでオリーブとピンチョスしか食べてないから腹減った。なんか食べて帰らない?」

 

 

 


もし、あの日、残業なんてしてなければ
もし、あのときクリスマスツリーなんて見てなければ
もし、あのとき一緒に夕飯に行ってなければ

 

 


ワタシは今でもかわいいシオリでいられたのかな。

 

 

 

ワタシは桜井さんに突然食事に誘われたことにびっくりして言葉を詰まらせていると、

 


「ゴメン、オ、オ、オレ、、そんなつもりで誘ったんじゃなくて、、あの・・その」


カズキのいつも動揺したときに見せるドモリ口調が面白くてつい笑ってしまった。


「アハハハハハハハ・・・じゃあ軽く一杯!!」

 


私たちはいたって自然な流れでタクシーに乗り込んだ。


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