出会いを求めて
膝から崩れ落ちるなんて表現だけで実際は崩れ落ちることさえもできず
ただただ、スヤスヤ眠るカズキの横でフリーズしてしまった。
”妻は子供ばかりでまったく俺の相手なんかしてくれないよ。愛なんて最初からなかった”
カズキは奥さんの話をするたびにいつもこう言っていた。
バカみたいに信じきっていたワタシ。
カズキのことはスキだけど
自分の中の何かがふっきれた。
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「シオリさーーんランチいきましょおお!」
マリとレイコが月に数回、思い立ったときにランチに誘ってくる。
丸の内のランチ平均価格は1,280円(ワタシ調べ)
正直ただの腰掛OLの給料ではそのランチの値段は厳しい、けど安物服系女子たちにそんなことばれたくないから、2回に1回の誘いは仕方なくノルことにしている。
「いいわよ。今夜は松坂牛のすき焼きに行く予定だからランチはさっぱりしたいものがいいな。最近ヴィーガンにハマっているからお野菜とれるリストランテとか?
あああ、いつもいくところはちょーっと高いから若い2人には厳しいよね。ウンウンいいのいいのじゃぁ会社の横の定食屋さんにしようか?」
「えーヴィーガンとかかっこいいんですけどおお!さすがシオリさーーん!あたしらよく分からないけど、今度つれてってくださいーー」
フフフ、また尊敬のまなざしで見てる。気持ちがよい。
「イヤイヤ、20代のうちはお肉をたくさん摂って良質なたんぱく質摂取したほうが良い女性ホルモンがでてお肌ツルツル・美しくなるわよ~ワタシが25歳の時は週5で焼肉いってたけどね。」
「えーそうなんですかー!物知りーぃ!」
全部適当な話なのに、120%信じ込んでいる。
こっけいだ。
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8年前、カズキも心の中で笑いながら、ワタシにウソついてたのかな・・・
何年たってもあの日膝から崩れ落ちた事を思い出す・・・・
定食屋では一番ボリュームのある揚げ物3点盛り定食を頼んだ。
定食が運ばれてくるまでは恋愛話や社員の噂話で盛り上がる。
「あ、そういえばーヤイバーエージェントとの合コン、今週金曜じゃないですかぁぁ?
シオリさん、ちゃんと予定空けてくれいますぅぅ?」
「えー今週の金曜だっけ?やだーちょっと待ってー」
もちろん空いているスケジュール。だけどマリやレイコの前ではいつも忙しいワタシを演じている。
「あ、大丈夫。大丈夫、あーあせったー!大学時代の恩師の還暦の宴がペニンシュラであるっていわれたんだけど、恩師がぎっくり腰になったからちょっと延期になったんだった」
前回はエルメスのレセプションパーティと言っていたのに今回はペニンシュラでの恩師のお祝いになっている。あーおもしろい。どうせバカは気がつかないだろう
ワタシだってカタカナを言いたいだけだし。別に悪気ないし。
・・・
そして金曜日、
独身生活を謳歌していると思われているワタシだが、本音を言えば結婚をノドから手が出るほどしたい。
ヤイバーエージェントというチャラそうな男子が多そうな会社だが、東証一部上場企業であることには違いないので旦那候補である。
男子側は30歳前後という事前情報があったので、今回のワタシは
【しっかり者の姉御キャラ☆週末は青山のcafeでコーヒーを飲みながら村上春樹を読む事が多いかな。家は9万円もする世田谷区☆お料理ブログもかいてます】
っていうテーマ。
合コンはキャラ設定が大切。だから途中でブレないように合コンに挑む時は毎回しっかりとキャラを作るのがワタシのマイ・ルール。
姉御キャラにふさわしい、タイトスカートにVネックのニット(どちらもユニクロ)で肌見せをしつつALTAで10年前に購入した8cmヒールのパンプスを履く。
唯一のブランド物であるエルメスのエールライン。古すぎてよれよれなのは知っているけどこれ以外ビニールのバッグだから仕方が無い。
早く買ってもらえる相手を見つけないと。
最後にルージュをひいて。
よし、今日もワタシはソコソコキレイだ。
秋が来ると思いだす
月曜日。
またかったるい一週間の始まりだ。
月曜は早く会社に来なければならない日で
朝一の営業会議で先週のクライアント獲得状況の進捗をなぜか男に混じって言わせられる。
ハ?だからワタシ事務職なんだけど?
会社からの対応にいささか疑問は感じるものの、ワタシは
【女性なら誰しもが憧れる丸ビルの事務職】で【本当に幸せ。】
と言い聞かせ、自席に戻る。
「ふわぁーー」
おもむろに午前中4回あくびをしてみる。
「シオリさんなんだか眠そうですね!昨日も派手に遊んでたんですかぁ?!」
斜め前に座っているレイコ28歳。マリと同じジャンルに属する洋服安物系ジョシのひとりだ。
フッ
「あっ、見られちゃったの恥ずかしいっっ。昨日は日帰りで奥多摩に紅葉狩りに行ってて。帰りは渋滞で家着いたのが深夜だったの~ ホラ、キレイでしょ」
「えーー!誰といったんですかぁ??ア・ヤ・シ・イーーー!彼氏?それとも彼氏候補のダンシBくんとかですかぁああーーーシオリさんいっぱいいそ・・・」
「コラっやめなさーぁぁーい!」
「キャー」
フフフ
昨日は家でずっと寝てたからマジ今眠くない。
この写真は来るであろう質問に備えてあらかじめ用意していた8年前の写真。
まじみんな頭弱いからチョロイッテカンジ。
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8年前。
初めて行った泊りのお出かけ。
別に今この写真が出てくることに特別意味はない。
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「わぁー!キレイ!カズキあれ見て!」
わたしが指を指した先にあったのは大きな野うさぎ。
奥多摩は東京とは思えないほど壮大な自然が残っている。
「あー野うさぎ、逃げちゃったぁ。。一緒に写真撮りたかったのにー、、もう!カズキがビックリさせるからだよっ!!」
「あははは、もうほんとにシオリはすぐ怒るなーそんなに怒るとヤカンって呼ぶぞ~」
「なにそれ!ちょっと謝りなさーい!!」
初めてカズキから誘われて行った旅行。
2人でふざけあいながら走った川沿いの道は今でも忘れない。
顔を寄せ合って撮った写真。
2人で分け合った鮎の塩焼き。
ワタシの心の高揚を表しているかのように真っ赤に燃え上がる紅葉。
カズキと初めて食事をしてからもうすぐ一年だ。
ワタシたちはあの日を境に、頻繁に会うようになった。
もちろんこんなこと誰にも言えない。
結婚している人と旅行だなんて最高の裏切り行為だし、絶対にダメなことはわかっていた。
でも、ワタシたちは世間でいう不倫とはきっと違う。
ただ単純に出会うのが遅かっただけ。純粋にお互いのことが好きなのだ。
カズキは普段家族の話をしないから、正直家庭の状況は分からないけれど、こんなに自分に時間を使ってくれて、包み込むようにいつも優しく抱きしめてくれて、、、
一緒にいるとカズキの深い愛情が溢れんばかりに伝わってくる。
(もしかしたら奥さんとうまくいっていないのかもしれない。)
その日の夜は、宿に戻ると、ワタシたちは朝まで愛を確かめ合った。
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ヴーヴーヴー・・・
カズキのケータイのバイブの音で目が覚めた。
なんだか喉が渇いたのでお水を飲もうと立ち上がると、カズキのケータイが光っている。
"" おはよ!お家空けちゃっててごめんね。おかげさまで実家でゆっくりしているよー^ ^ねぇ聞いて!さっき初めてあかちゃんがお腹蹴ったの!カズキに似て元気なのかなぁ^ ^ カズキパパ毎日お仕事大変だと思うけど、ガンバってね♡""
ワタシは膝から崩れ落ちた。
行きつけの店
タクシーの中では他愛も無い仕事の話なんかをして。
マイと美香の話に触れる事はなかった。
ワタシもあえて、避けていたのかもしれない。
少し沈黙が続いたその時、キラリと光る結婚指輪が目に飛び込んできた。
「あ、、あ、ご結婚されたんですよね。おめでとうございます。」
なぜかこのとき、ほんの少し、胸の苦しさを感じた。スキナハズナイノニ・・・・
カズキはうれしそうな顔をするわけでもなく、まるで聞かれたくない話かのようにすぐに話題を変えてきた。
「あ、うん。そうだよ。そういえば上野動物園貸切ってできるの!?」
「それが難しそうで・・ちょっと煮詰まっています。」
「やっぱり国営の動物園だから判断に時間がかかるよね。民間が運営しているところいくつかピックアップしてリストおくるよ」
「え・・いいんですか?助かります・・!ありがとうございます!!正直、上野動物園がダメそうでへこんでいたんです・・・!!」
「そんなのお安い御用だよ。クリスマスツリーにお願いするんじゃなくてボクを頼って」
カズキのこういう男らしさにマイと美香が惹かれたんだろうな。本当に魅力的な人。
「さぁ、ついたよ」
タクシーが止まった先は
「あ、ここしってる・・」
つい声が漏れてしまった。
この店は紛れも無くマイと美香とカズキで行った店。
「あれ?来たことある?ここのサルシッチャのペペロンチーノが絶品なんだよ!!」
パスタが大好きなカズキ。無邪気にキラキラした目でそんなこと言うから、思わず、愛おしいと感じてしまった。
「アハハかわいいですね。初めてきました^^サルシッチャのペペロンチーノ楽しみです。」
店員「桜井様いらっしゃいませ。いつものお席ご用意させていただきました。」
店の中に入るとカズキはこなれた感じで店員さんにはなしている
「今日のフィレってどんなかんじ?シャトーブリアンかーじゃぁさっぱりとバルサミコソースにしようかな。あとグラスで泡をお願いします。」
慣れているカズキに見とれて・・はじめてくるステキなお店に緊張して・・・
シャンパーニュが運ばれてくるまで、私は何も話す事ができなかった。
「中村さんシャンパン大丈夫だった?無理なら言ってね。」
まだシャンパーニュを飲んでいないのに、
顔が真っ赤になりそう。
そしてワタシの心臓の鼓動がカズキに聞こえてしまうんじゃないかって程大きくて・・・どうしてだろう。
「あまりお酒強くありませんが、シャンパンは大好きです。」
「そっか。よかった。じゃ、今日の偶然の出会いに乾杯。」
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グラスを重ねた瞬間には、もうスキになっていたんだと思う。
神様のいたずら
""2人はもうすっかり元気になって新しい出会いに向けて勢力的に活動中ですよ笑""
カズキにいったこの言葉。
本当は真っ赤なウソ。
カズキとの三角関係があった挙句のカズキの結婚宣言は2人を地獄に叩きつけた。
マイはその後、寂しさを紛らわすかのように行きつけのバーのマスターと体だけの関係に走り、
美香も経理という立場を利用して会社の金を不正に利用。大事には至らなかったものの出世街道の道は断たれた。
でも、そんな2人をそこまで追い詰めたのは紛れもなくカズキだった。
今から思えば、カズキほど優しくて残酷な男はこの世にいるのだろうか。
カズキを忘れられず苦しんでいる2人を、親友であるワタシは一番近くでそれを見ていた。
もうあれから1年も経つのに・・・
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『今年ももうクリスマスの時期かぁー』
シオリの会社はボストンに本社を置く世界の中でも有数のメガバンク。
来週に本社の会長が孫と一緒に急遽来日することになり、孫がついでに日本を観光したいと言い出したため、そのアテンド係にシオリが抜擢されたのだ。
最高級のおもてなしをするようにと、日本支社の社長からも指示をされている。
店の手配からアメリカンジョークの練習の日々。忙しさのあまり街が彩り始めたのにも気づかなかった。
今日は上野動物園の貸切交渉が長引き、時計を見ると時間はもうすぐ22時だ。
会社の目の前には華やかに飾り付けられた大きなモミの木が暖かいまなざしでこちらを見ている。
(来年こそはステキな男性と出会えますように。)
クリスマスツリーの前で立ち止まり、大きなツリーにお願いごとでもしてみよう。
クリスマスツリーのあたたかな光に吸い込まれるような感覚がして日々の疲れが癒されていく・・・シオリはその場を動けずしばらく呆然とツリーを見上げていると、
「遅くまでお疲れさま!」
おでこに当てられたホットコーヒーにびっくりして振り返るとそこにいたのはカズキだった。
「えぇえ?桜井さん!?なんでここに・・・!?!?」
「近くでクライアントの祝賀会があってね。疲れて途中で抜けてきたけど、このクリスマスツリーに寄り道してから帰ろうかなって思って。」
「そうなんですね!桜井さんクリスマスツリーなんか見るんだ!かわい~笑。
あ、なんかイヤホンから音楽もれてますよ?・・・この曲、、もしかして岡本マヨ?のTomorrow??キャーうけるーーーー!」
普段会社で見る顔とは違った、プライベートな一面を見た気がして、なんだか無性におかしくなってしまった。
「絶対誰にもいうなよ~~~~なんかこの曲聞いたら懐かしくなるんだ。」
照れた様子で慌ててケータイの音楽を切るカズキ。きっとカズキにとってなにか大切な思い出の一曲なのだろう。
「中村さん夕飯まだ?オレ、さっきのパーティでオリーブとピンチョスしか食べてないから腹減った。なんか食べて帰らない?」
もし、あの日、残業なんてしてなければ
もし、あのときクリスマスツリーなんて見てなければ
もし、あのとき一緒に夕飯に行ってなければ
ワタシは今でもかわいいシオリでいられたのかな。
ワタシは桜井さんに突然食事に誘われたことにびっくりして言葉を詰まらせていると、
「ゴメン、オ、オ、オレ、、そんなつもりで誘ったんじゃなくて、、あの・・その」
カズキのいつも動揺したときに見せるドモリ口調が面白くてつい笑ってしまった。
「アハハハハハハハ・・・じゃあ軽く一杯!!」
私たちはいたって自然な流れでタクシーに乗り込んだ。
23歳冬のハナシ。
マイと美香とワタシは銀行の同期入社。
美香は一般職で、マイと同じ高校大学そして親友。(マーチだったかな?)
マイとワタシは総合職で女子2人だけだったから、意気投合。
マイ、美香、ワタシの3人は半ば当然のように仲良くなった。
毎晩、仕事帰りに安い立ち飲みでビールを飲んで、真剣に仕事について話したり。
もちろん恋バナは欠かさずで、今どんな人が気になるとか、メールしてるとか逐一報告しあったり。
合コンもそれなりに行ったし、トリプルデートみたいなことも楽しんでいた。
社会人を謳歌してる!っていう感覚に酔っていた毎日。
でも、女三人ってなかなかうまくいかないってイウデショ?
入社2年目、23歳の冬、マイと美香は同じ男性を好きになっていた。でもその男性は既婚者だったようで。
マイと美香は落ち込んでいたし、ライバルになったことにもショックを受けていた。
そのハナシを聞きながら、ただただ相槌をうって2人を慰めていた。
でも
後日、既婚者と知りながら・・・マイと美香が好きだったと知りながら、、ワタシはその男性とお付き合いをした。
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カレの名はサクライカズキ。
23歳の冬、コンサルティング会社の桜井カズキがバツの悪そうな顔で私たちの勤める銀行にアポイントに来た。
これが私たちの~出会い~
たまたま会社の受付をしたワタシはこの桜井カズキがマイと美香のアレということにすぐに気がついた。
だって、マイと美香はカズキの特徴、社名、癖。なんでも教えてくれていたから。
カズキ「あ、あの、山田部長と14時からお打ち合わせの約束をしているサクライと申します・・ゴニョゴニョ」
「お話はいろいろ聞いていますよ笑 さくらいさんワタシの親友達に悪さしないでくださいよぉ~」
なんだか初対面な気がしなくて、ついおちょくってしまった。
カズキ「イヤ、悪さなんて・・オレはタダ・・・あ、いやボクは・・・・なんでも・・・あぁあ」
「フフ大丈夫、2人はもうすっかり元気になって新しい出会いに向けて勢力的に活動中ですよ笑」
カズキ「ホッ!!!ならよかった・・・正直御社にに来て2人に顔合わせたらどうしようってハラハラしてたんだよね、そんなつもりじゃなかったけど結果的に傷つけてしまったし。」
「そうですね。それはそれは・・・傷ついていましたよぉ」
カズキ「あああああだよね。オレってバカだなーほんと。どうしたらいいんだろう。改めて、2人に謝りたいなぁ、、でもオレはそんな連絡とる資格ないよな、、あぁぁ」
慌てふためいてるカズキの様子がほんっとーに面白くて笑わずにはいられなかった。
「アハハハハハハ・・・ごめんなさい、わらっちゃって・・・ほんと素直な方ですね。マイと美香に何か伝言しましょうか?」
カズキ「うーーーんそうだなーーあーどうしよ・・・直接言った方がいいかな、いやでもいうのもつらいなーこまったなーウーンすっみません、答えが出ません・・・あの、あとで・・・あぁこんなこといったらまた軽い人間だと勘違いされるか・・いやでも2人のこと相談したいので連絡先きいてもよいですか?あ、すみません名前も聞く前に連絡先きくだなんて・・わ、ああ、あ、あ」
「アハハハハほんとーにあわてすぎですよ。美香とマイは大切な友人です。一緒に考えますよ。ちゃんと和解してください笑」
この時のワタシは純粋に美香とマイが幸せになれるよう
お手伝いをするつもりだった。
ほんとうにただ、それだけ。
だって「ワタシハイイコ」だったから
アイツに会うまでは。
ようやく迎えた週末。
休日のしおりの朝は遅い。
時計を見ると13時。
この時間まで寝れるなんて本当に幸せ。結婚してなくて本当に良かった。
昼ごはんに納豆ご飯を食べながら、自身のブログ「☆★毎日キラキラ生活★☆」を更新する。
おひるごはんー♥️おうちの近くの「レ・ピエモンテ」のクロワッサンにハマり中♬♪
あーんど!チアシードのスムージーでビタミン補給╰(*´︶`*)╯♡
「さて、と。」
今日の夜は大学時代のサークル友達と女子会だ。
月に一回くらいのペースで開催されるこの会は、全て独身女性で構成されており、彼氏ができたり結婚なんかしたりすると、とたんに少しずつ呼ばれなくなるという暗黙のルールが敷かれている。
私たちの中ではこの会を「プリンセス会」と呼んでいる。
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19時。時間どおりに到着。
本日のお店は、元麻布の路地裏にたたずむjapaneseキュイジーヌ「カーサ・デ・グランデ」。
店内は明るくモダンだが、木目調で統一された店内はどこか懐かしい。
その居心地の良さから「プリンセス会」のほとんどはいつもこのお店で開催している。
細い石畳を通り、暖簾をくぐるとそこにはすでにマイコが座っていた。
マイコ。
大学時代の一番の親友。
そして、大学時代に同じサークルにいたケンスケを共に好きになった恋のライバル。
その後、ケンスケはマイコと付き合った。
ケンスケとマイコの幸せそうな交際に、最初は素直に応援できず、一時期は二人を避けた時期もあったけど、でも、ワタシは最終的に友情を選んだ。
自分が好きだった二人が幸せになることを祝福するのが友達だと思ったから・・・
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トモミ「えーそれでマイコはいつから彼氏いないんだっけー?」
マイコ「もう2年くらいかな。恋愛の仕方、忘れちゃってさ。もうどうしよ~~」
シオリ「ダメダメ!彼氏いなくても男と食事くらいは定期的にしないと女が腐るよ!へー!すごいねー!尊敬しちゃう!この三言で男は大体喜ぶからさ、自信持って!」
マイコに恋愛の指導をするのは決まってワタシ。ちなみにわたしはここだけの話、もう四年彼氏がいない。
「さっすが!恋愛マスターシオリ!!やっぱり経験豊富なしおりからのアドバイスはなんか説得力あるー!」
実に爽快だ。
いつからなのだろう。
こんなに性格がひねくれ、プライドを守るためだけに嘘で塗り固められた生活を送るようになったのは。
『ワタシハイイコ』だったのに。
そう、アイツに会うまでは。
友人の結婚
「マリちゃんおはよー今日のファージャケット、季節先取りでかっこいいね」